【活動報告】第1回ウィメンズヘルスリテラシーサミット

去る9月28日(木)、丸の内EGG JAPANにて(一社)ウィメンズヘルスリテラシー協会(以下WHL)設立を記念し、キックオフイベント「第1回ウィメンズヘルスリテラシー協会」を開催いたしました。おかげさまで100名近くのご来場者様で会場は満席となり、1時間半のセッション中、観客席もふくめ活発な意見交換が行われました。

まず代表理事の宋美玄(丸の内の森レディースクリニック 院長 以下宋)によるご挨拶で会はスタートし、協会設立に至った「『正しい情報は面白くない』VS『キャッチーなことは正しくない』」という医療情報をめぐるメディアにおけるジレンマをあらためて説明、医療サイド・メディアサイド双方にメリットをもたらす問題解決への取り組みをウィメンズヘルスリテラシー協会が牽引して行っていきたいと抱負を述べました。 

トークセッションは宋のほか、WHLの理事をつとめる齋藤英和(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 不妊診療科、以下齋藤)、岩永直子(BuzzFeed Japan、以下岩永)、増田美加(女性医療ジャーナリスト、以下増田)、そしてゲストの鈴木美穂さん(日本テレビ 報道局社会部記者 兼 キャスター/NPO法人マギーズ東京 共同代表理事、以下鈴木)が参加し、モデレーターは今村優子(日本医療政策機構 シニアアソシエイト、以下今村)がつとめました。 

まずパネリストが自己紹介とそれぞれの立場からヘルスリテラシーについておもうところを述べました。 

「『いつ妊活をスタートしたらいいのか』これまでも正しい情報の普及につとめてきた。本日も端的に紹介できる『ほしい子供の数別、達成確率別にみた妊活を開始するべき上限年齢』グラフを紹介したい。正しい情報を知り、自分なりのプランを持ってほしい」(齋藤)

 「正確性の高い医療情報の発信につとめてきた。BuzFeedを最近立ち上げたが、新聞~ウェブでの経験がある。(DeNAの)WELQだけではなく、あらゆるメディアで同じように情報作成が行われていることにみなが気付いてきた。根拠を確認しないまま誰もが発信できる時代になっている時代。ではなにが必要か?対メディア、受け手、専門家、行政・公的機関それぞれに取り組むべき課題がある」(岩永) 

「30年の仕事のなかであってきた医療関係者は2000人。自分が乳がんになり、患者視点を持つことの大切さを知った。本業に加え乳がんの啓発活動も行っている。女性誌にずっとかかわってきたなかで感じていることはいろいろある。ウィメンズヘルスについてメディアのかける問題、その解決へ向けたアイディアも多数ある」(増田) 

「テレビ報道の記者入社3年目で乳がんを発症した経験から報道の側からメディアの受け手の立場に寄り添うことを知る。数年前から厚生労働省の担当になり、ようやく自分のやりたかった取材を行っている。STAND-UP、マギーズ東京の活動も行っている」(鈴木) 

「みなさんの自己紹介から見える課題として、知識不足、エビデンス不足、ビジネスが絡む問題がある。海外に比べ受け手のヘルスリテラシーも日本は低い」(今村)  

みなさんの自己紹介が終わり、セッションがスタート。まずは医療サイドから、

「専門家の選び方の難しさについて。完璧な専門家はいないのは事実。あまり専門家をあがめるのではなく、パートナー的な活用をすべき。二人三脚したい」(宋)

「いつも思うことは、自分から情報を求めている人ではなく、必要に感じていない層(受け手)にこそ本当に正しい情報を届けたい。メディアの方は1度聞いたこと内容には反応が薄い。こちらは本当に伝えたいことは何度でも発信しなければいけない。どうすればキャッチーに届けていけるかが課題だ」(齋藤) 

会場にお越しの勝俣先生にも意見をいただきました。

「メディアセミナーを行っている。医療側も正しい発信をする必要がある。医療側とメディアの垣根をとるなにかをしたい」(勝俣先生) 

次にジャーナリストサイドの意見です。

「ジャーナリストの自分としては保険診療をしっかりしている医師、標準治療をしている医師から話を聞きたい。しかしメディアでは自費診療のドクターから話を聞いている例が多い。また、自分は匿名原稿ではなく記名原稿にこだわっている」(増田)

「スポンサーとの兼ね合いについて。新聞記者時代には広告サイドからの圧力はなかった。web業界はPV稼ぎが間違った表現の記事につながっていた。取材先(医師)が一番肝だと思っているので、編集部にも取材先を入念に確認している」(岩永)

 どのようにメディアサイドと医療サイドが協力しあうべきか、議論はまだまだ続きました。 

「情報を発信する側としても、自分は信頼できる人をたくさんまわりに置くことが大事だと思っている。リテラシーは1日にしてならず。」(宋)

「読売新聞は最初に医療部を作った新聞。ヨミドクターをはじめて、おかしい記事が載るとまわりが指摘してくださって情報の正確さを増してきた」(岩永)

「自分が病気になったとき、いろいろな方を紹介されたことも含め情報に錯綜した。メディアは迅速性が求められるので、すぐに取材できる人がテレビに出ていることもある。社内でのヘルスリテラシーが高まってきた。製作側にいるといろいろある。取り上げてもらうやり方がある」(鈴木)

「まわりに信頼のおけるブレーンを置いておくことはとても大事」(増田)

「若年性のがん患者向けへの発信や、医療者によるアドバイスを提供しているが、マギーズにいらっしゃる人でも納得のいく治療にいけないまま、不確かな情報を信じている人は多い。状況を変えていきたい」(鈴木) 

会場からもそれぞれの思うところ、あるいは所属されている会社の企業努力の実情などヘルスリテラシーに関し意見をうかがいました。 

「機械に読み込ませているがWELQの件で人が目視することの大切さをあらためて社内共有した」(大手検索エンジン会社勤務)

「アプリで健康情報をだしているが、企画から入っていただき専門家に監修を依頼している」(健康関連のアプリ開発企業勤務)

「(薬剤師の立場から)情報を整理できないで相談に来る方おおい。薬事の大切さを感じている」(薬剤師) 

「地域の助産師の教育につとめている」(助産師)

「いいっぱなしになっていることがおおい。記事のランク付けはできないものか」(産婦人科医)「なにかやれることがある、悪い情報を駆逐できる時代だとおもう」(救急医)

 トークセッションをしめるにあたり、理事メンバーからは「カリキュラムを作成しリテラシーを高める人を増やしたい。専門家チームを作りたい」(宋)「正しいウィメンズヘルスリテラシーがひろまってほしい」(齋藤)「SNSを重視している。みんなで取り組みたい」(岩永)「ただしい知識を伝えていける場、ただしい情報を発信していく場をつくっていきたい」(増田)という協会設立にあたっての抱負があらためて述べられ、ゲストにお越しくださった鈴木さんからは「患者経験者として、いざというときにただしい情報を選びやすい環境になってほしい」と期待が寄せられました。

最後に、協会の理事である宮田俊男(みいクリニック院長)が登壇し「せっかく正しい治療法があるのに、間違った情報にとびついてしまうのか、と思うケースがおおい。ひとつのきっかけがおおきな変革に。いっしょに作り上げていくということがとても大事だとおもう」と、ご参加くださった皆様に対しWHLの今後の活動に対するご協力、ご支援をお願いするかたちで閉会の挨拶とさせていただきました。

一般社団法人 ウィメンズヘルスリテラシー協会

一般社団法人 ウィメンズヘルスリテラシー協会のホームページです。